白雪姫は寵愛されている
「で、でも…」
突然そんなことを言われても。
今までそう呼んできたのに…。
「次、先輩って言ったら…怒る」
「えっ!?」
「あと苗字も駄目だ」
「そ、そんな!せんぱ…あっ、」
たった今言われたことを即やってしまう私。
「…言ったな?」
「う、うそです!違います!」
「いや、確実に言った。先輩って」
「き…聞き間違いです…!」
「…なんて言ったんだ?」
「え…っと、」
そんなこと考えてない。
なんて言うべきなんでしょう?
考える、考える…でも出てこない。
「ごー」
「え!?な、なんですか!?」
「よん」
何故かカウントダウンが始まる。
「さん」
「ま、まってくださ…」
「にー。いち…………ゼロ、」
何も思い浮かばず、時間切れ。
「先輩って言ったよな?」
「ご…ごめんなさいぃ…!」
怒られるよね?
次言ったら怒るって言ったもの。
な、殴られたらどうしよう…?
「お、怒らないでくださいぃ…」
サーッと血の気が引いた。
慌てて先輩の胸板に自分の顔を押し付けた。
殴られ防止。
私を引き剥がされないように。
そんな気持ちでさっきよりもぎゅっとしがみつく。先輩のワイシャツは私のせいでしわが出来る事になってしまった。
あまりにも密着し過ぎたのか、先輩はビクッと身体を揺らした。
「……千雪、ストップ」
「お、お願いです!殴らないでください…!」
「な、ぐらない!だから一旦離れ…」
「もう先輩って言いませんからぁ!!」
「千雪!まっ…マジで動くな!」