白雪姫は寵愛されている
────放課後、
倉庫に着いた時には颯太くんを除くみんながいた。
颯太くんは…どうやらまた道を間違えているみたい。
相変わらず難波先輩は寝ていて。昴くんは昨日同様、片手にタバコを咥えていた。
「千雪さん」
灰皿にタバコを押し付けた昴くん。
バッグから出したのは…読みかけの本。
思わず手を伸ばしそうになったけど…、
それを見るためには膝枕しないといけない。
でも、昼休みに仁くんと約束してしまった。
首を左右に振って、無理だと伝える。
「読まなくていいんですか?とても面白いですよ?」
揺さぶりを掛けられている。
私の心はすでに揺れているけど。
…でも、約束したから。
「だ、だいじょうぶ…です」
「そうですか?この本、返却日まで返す気はありませんけど?」
返却日、つまり一週間は借りれないってことになる…。
一週間も見れない…。
いい所で。気になるような所で…。
じっと我慢していると、昴くんが溜息をついた。
「そうですか…なら仕方ないですね。これは持ち帰りま────、」
バッグに入れる前に袖を掴んだ。
昴くんの動きが止まった。
私の後ろには…仁くんがいる。
見たい。すごく読みたい…!いい所で終わったし、気になって夜も眠れそうにない。…だけど約束したばかり。
「み、みたいんです…、」
「読みたいんですか?でも、読み終わるまでは千雪さんの膝を借りますよ」
「そ…それはダメなんです」
「それなら、読ませません」
「ひぇ……、」