白雪姫は寵愛されている

休日



─────本は読めず仕舞いだった。



「…続きが、気になる……」

「なんの続き?」



隣に座った朔也くんが、ココアを手渡ししてくれた。

両手で持ち、ごくんと一口。


いつもと同じ。
あまいココア。



「えっと、読みたい本が途中までしか読めなくて…」



……怖かったなぁ。
昴くんと仁くん。


難波先輩が起きるまでの間。三十分ぐらい。

ずっと睨み合いとちょっとした口論の板挟みになっていた私は、涙目状態で我慢していた。そんな状態で「貸してください」なんて言えるわけがない。



「ふーん?それなら、その本、買ってあげようか?」

「き、気持ちは嬉しいけど…大丈夫だよ」



そう簡単に手に入る物じゃないし、探すのも大変だと思うし…とにかくこれ以上朔也くんに迷惑を掛けるわけにはいかないし、ね。



「さ…朔也くん、明日はお休み?」



何か言いたげな朔也くんの話に割って入った。
きっと、その本の名前を知りたいんだと思う。

…言ったら本当に探して買ってきそう。
でもこれ以上私にお金を掛けたくない。


明日は土曜日。
学校はお休み。


「うん。休み─────、」


そう言いかけた時、朔也くんの携帯が鳴った。
ディスプレイを見ると深く溜息を吐いた。


「ごめん。仕事になっちゃった」



…だと思いました。

この時間に連絡が来るなんてきっとそうだと思った。


「白雪は…俺と一緒に居たかった?」



…そんなの、


「うん。当たり前だよ」


迷うことなく言い切れるよ。


「っ……、白雪」


突然私を抱きしめた朔也くん。
危うくココアを落としそうになる。



「俺も白雪と居たい。ずっと、」

「さ、さくやくん?あ、あのココア…」



零れちゃう。



「……今日も沢山飲んで、いい夢見て。夢の中で俺に出会えるように」



朔也くんと…?

ふふっと口元を抑えて笑った。
だって変な事言うから。


「朔也くんと会うの?」

「どうして笑ってるの、白雪…ふふ、可愛い笑い方」



多分妹だからそう感じちゃうだけで、実際は全然可愛くない。朔也くんの目はフィルターが掛かってるんだと思う。でもそれももう慣れた。

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