白雪姫は寵愛されている


目尻に溜まる涙。
自然と出てきたみたい。


「フッ…泣くな。悪いことしてる気分になるだろ」

「してるじゃないですかぁ…!」


仁くんは笑う。


離せばいいんだろ、と言って手を離してくれた。


顔が熱い。
身体中が熱い。


イケメンな人に対しての耐性が全くありません。あるのは朔也くんにだけで。仁くんに対しての耐性なんかじゃない。だからきっとこんなにドキドキしてるんだ。



「まだ残ってる、食べれるな?」


「も、もう無理です…」



そのフォークは、さっき仁くんが使ったもの。さっきのは…仕方ないとして。流石にもう無理です。


その時に気が付いた。


隠れるようにあったビニールに入ったプラスチックのフォークに。どうやら二個付いていたらしい。


そ、そうですよね!
私と仁くんの二人ですし!

二つ入っていますよね…!


未開封のフォークに手を伸ばした。…が。あと少し、という所でフォークが無くなった。


仁くんが先に取ってくれたから。



じ、仁くんも気が付いたんですね!



良かったと安堵し、開けてくれるのを待ち続ける。─────なんて考えてたというのに。



< 93 / 147 >

この作品をシェア

pagetop