白雪姫は寵愛されている
バキッ、
折れた。
真ん中から。
「………え?」
「もうあるだろ」
出したのは、さっきまで使っていた…あのフォーク。
ど、どうして…!?
それは…駄目です…!
「あ、あとは仁くんが全部食べてください!」
「甘いものはそこまで好きじゃない」
……え?…やっぱり苦手なんですか?
「そ…それなら、どうして買ったんですか?」
「千雪が甘いの好きだから」
確かに好きです、けど。
私はそんな事一言も…。
「千雪、必ず弁当にデザートあるだろ」
「え?…それは、」
季節の果物という感じでほぼ必ず付けるデザート。
「果物、毎日美味そうに食うからな。好きなんだろ?」
「は、い」
当店一番人気と書かれたポップのケーキには見向きもせず、フルーツが沢山のケーキやタルトを選んだのは─────、私の為だったんですか?
─────ドキッ、
どうしよう、変な感じする。
胸がきゅーってなってる。
「千雪?」
首を傾げた仁くんに、また胸がきゅーってした。何故か分からないけどドキドキがさっきよりも強く感じる。
胸を抑える私に仁くんが口を開く。
「胸やけでもしたか?」
「な…なっていません…!」
確かに久々のケーキだけど…、まだまだ大丈夫です!失礼しちゃいます…!
「フッ、怒ったのか?ほっぺが膨らんでる」
「怒ってませ…ンムッ!」
摘ままれた頬が引っ張られる。左右に伸びる。
「じ、じんく、」
「はは…可愛くて、仕方ないな。千雪は」
キラキラする笑顔を向けられて、
ドキッ
と大きな音が鳴った。仁くんに聞こえるんじゃないかってぐらいの大きな音に吃驚する。
「か、わいく…ありませ、ん…」
朔也くんと同じ”可愛い”が、どうして違く感じるんだろう…?
顔を逸らそうとした私の頬を包む大きな手。温かくて心地いい、仁くんの手の平。
きゅっとする心が苦しい。
「可愛い、千雪」
きっと風邪を引いたんだ。