白雪姫は寵愛されている



「───────おかえり、白雪」



「きゃ、あ!?」




玄関を開けてすぐにそんな声がして吃驚した。
振り替えると笑顔の朔也くんがいる。


「そんな驚かなくてもいいのに」

「だ…だって…、まだ帰ってないと思ってて…」


時刻は15時半前。てっきり18時過ぎに帰ってくるとばかり思っていた。いつもそうだったから。


「今日は早く終わってね…それで?何処に行ってきたの?」


指差すのは私の持つ袋。一つは買い物袋で二つ目は、ケーキ屋さんのロゴが入ったもの。

どうしよう…まだ帰って来てないと思って持って帰って来たのに。


「ケーキ…食べたくて。寄ってきたの…」

「そのケーキってテレビでやってたやつだよね?」

「う、うん。美味しそうだったから、買って来たの。一緒に食べよう?」


ケーキの箱を開け、中身を見せる。中にはケーキが三つだけ。


「……うん。そうだね。紅茶用意するよ」

「あ、ありがとう!」


箱を受け取った朔也くんがリビングへと入って行く。

本当はもう甘い物は要らないけれど。
…そんな事は言えないから。




「ねぇ、白雪」




私も続けてリビングに入った時、朔也くんが呟いた。キッチンでお茶の用意をしている。


「どうしたの?」

「このケーキ屋の特集、一緒に見たよね」


そう言えばそうだったね。
いつものココアを飲む時間に一緒に並んで観てたね。


「あの時、お勧めはチーズケーキで待ち時間は早くても1時間って言ってたよね」

「う、ん。そうだったね」


ガラスが当たる音と紅茶を淹れる音。凄くいい匂いが広がる。



「白雪が1時間掛けて並んで、看板メニューのチーズケーキじゃないものを三つ買って、持ち帰り用なのに保冷材も無ければプラスチックのフォークが付いてない」



小さな朔也くんの声が響く。



「俺と食べる為に。態々1時間並んで三つも買った。

───────…白雪、
本当にこれは自分で買って来たんだよね?」



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