白雪姫は寵愛されている
「千雪さん、これ良かったら見ますか?」
「っ!?こ、これ!どこで!!?」
「ふふ、秘密です」
昴くんがニコニコしながら見せてくれたのは、プレミアがつくほど有名な本。しかも初版本だった。
見たくても図書館にもなかった代物。
もう販売もされておらず、販売数もたった百程度しかなかったらしく、今では高値で取引されるほど有名な本。
昴の持つ本に手を伸ばす。
…その手が引っ張られた。
バランス崩れた私を抱えるのは仁くんだった。
「じ、じんく…」
「昴、その手はなんだ」
「ハハ、もう潰したりなんてしませんよ。ただ…触れるぐらいならいいじゃないですか」
また何か企んでいたらしい。
それに引っかかる私も私ですが…。
「仁、千雪さんを独占しすぎではないですか?僕にも少しぐらい良いじゃないですか」
「…ダメに決まってるだろ」
「じ、じんくん…苦しいです…」
そう言うと、悪いと言って離れてくれた。
ようやく解放された。
ドキドキで心臓が破裂しそうだった…。
落ち着くように深呼吸をする。
ああ、もう顔が熱い。
どうしてそんなに抱きしめてくるのですか?
お付き合いしているわけでもないのに。
それぐらい…仁くんにとっては普通の事なのですか?
私ばかり、ドキドキしてるのかな…。
「千雪さん」
「にゃ!?」
突然耳元で声がした。
ビクッと震えて耳を抑えた。
「随分可愛らしい猫ですね…食べたくなってしまいます」
「た…食べられません…!」
「フ…冗談ですよ。泣かないでください」
手が頬に触れた。
───────横から感じた黒いオーラ。
隣には仁くんがいる。
凄く黒くて…怖かった。
「…昴、表出ろ」
「ハハ…勘弁してください。骨だけで済まないじゃないですか。
仁、抑えないと。
千雪さん怖がってますよ?」
「手を放せ、昴」
「無理ですよ…千雪さんから掴んでますから」
「あ゛?」
「ひゃ…、」
離せと言われましても…怖くて手が離れません。