偽りの恋人契約も秒で解除としましたが婚約した件
「こんばんは」

にこやかに歩み寄って来た今井さんは、挨拶したあと遅れたことを詫びながら空いていた席に着いた。
こういった飲み会の席に来るのが不思議なくらい、女子との出会いを求めているタイプには見えない。
一目見ただけでこの会のイケメン枠だとわかる。

彼女の一人や二人は常にいそうだ。
かと言って軽く見えるかというとそうでもないから、不思議がふくらむ。

ぼんやり今井さんを見て不思議がっていると、飲んでいたウーロン茶が空になった。


「あ……」


(チャンスかもしれない!)


仕切り直されようとしていた飲み会で、ここは『帰宅』のカードを切るべきときだ。
そう思った私が空になったグラスをそっとテーブルに置き、「あの、私はそろそろ……」と言いかけた声が「あ!理緒(りお)ちゃん!」と仕切りがちな男性に名前を呼ばれる声でかき消される。

「はい!?」
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