偽りの恋人契約も秒で解除としましたが婚約した件
「じゃあ、理緒ちゃん。俺と付き合ってることにしない?」
「はい!?」
「お互いを恋人という設定にしておけば、恋人がいるっていう嘘もつきやすいかなって」

今井さんは頭がいいのか悪いのか判断に迷うタイプでもあるかもしれない。
けれど架空の恋人がリアルに存在するならば、恋人がいる設定で生きるのもアリかもしれないとつい思ってしまった。

私は一人で生きるのも悪くないなと思っている。
今のところ結婚を焦ってもいない。
だからこそ、恋愛事情はそっとしておいて欲しい。


「名前を聞かれても、相手がどんな人かも答えられるし。写真も共有すれば……」
「リアル……」


今井さんのアイデアに思わず声が小さく零れる。
歩みを止めた今井さんにつられて立ち止まると、優しい笑みを浮かべる彼に大きな手を差し伸べられた。
偽りの恋人契約を結ぶべきか、否か。
私は迷いながらも、ゆっくりとその手に触れる。

指先が触れ合った瞬間、手を引かれて今井さんの胸へと抱き寄せられた。
< 6 / 10 >

この作品をシェア

pagetop