偽りの恋人契約も秒で解除としましたが婚約した件

ぎゅっと抱きしめられて、頬を撫でられたかと思えば唇が重なる。
そうすると決めてたかのように今井さんの動きには躊躇いも何もなかった。

「な……」
「キスくらいはすませてないと」
「設定ですよね！？」
「俺とキスしてないのにキスしたって嘘、つける？」

確かにリアルな体験が、嘘をリアルに仕立てる。
理屈はわかるがキスがリアルなキスで私に刻まれるなら、今井さんと体だって関係を持つことになるだろう。
しかも多分、これは手が早いやつだ。

「今井さんの提案はそういう目的ですか？」
「正攻法じゃ理緒ちゃんが落ちてくれそうにないから」

私が突き飛ばすより先に、今井さんが両手を上げて降参ポーズをとった。

「ごめん。俺、嫌われた？」
「……すぐに離してくれたところはプラスに評価しておきます」
「理緒ちゃんと正式にお付き合いするにはどうすればいいですか？」
「なんで私にこだわるんですか？」
「俺は飲み会顔出して理緒ちゃんがいいなと思ったの嘘じゃないから諦めたくないです」