偽りの恋人契約も秒で解除としましたが婚約した件
ほとんど会話もしてないし、過去にも容姿で異性を引き寄せたこともない私には、今井さんの一目惚れみたいな発言はまったく理解が出来なかった。
でもいまだ『もう何もしません』とばかりに手を上げたままでいる今井さんは、かっこいいのにかっこ悪い。

そんなところをさらけ出してくれていると思うと、ふっと笑いがこみ上げてくる。
なんだか愛しくなってしまうから不思議だ。

「……笑った顔、かわいいので抱きしめたいんですが」
「いいですよ」
「え……」

自分で要望を出したのに、さらりと許した私に今井さんは驚きを見せながらも私を大事そうに抱きしめる。
二度目のハグは、素直に彼のぬくもりをあたたかいと感じられた。

「俺のこと好きになってもらえませんか?」
「明日になっても、明後日になっても、これから先もずっと今井さんの気持ちが変わらないなら。私の気持ちも好きに変わるのかもしれません」
「じゃあ、口説きつづける」
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