虐げられた令嬢は貴公子の夢を見る ~気がついたら幸せな結婚が決まっていました~
 ああ、またこの夢だ。
 セレスティーン・ジ・ウィーニーは喜びとも落胆ともつかない嘆息を漏らした。

 自分は今、花園の中にいた。青空の下、白い薔薇が咲き乱れ、緑の枝や芝生との対比が美しい。花弁は光を受けて銀色に輝き、周囲はかぐわしい香気に満ちていた。

 眼の前には紫の髪、黄金の瞳をした美貌の若い男性。まるで王侯貴族のような衣装を身に纏い、気品に溢れている。

 そして自分もまた、普段は着られないような美しいドレスを着ている。いつも彼が魔術で着替えさせてくれるのだ。

「セレスティーンは今日も綺麗だね。瞳の色に合わせて青いドレスにしたけど、よく似合ってる。黒い髪にはパールがいいかな」

 彼は優しく微笑み、指をぱちんと鳴らす。それだけで髪に白薔薇と真珠の飾りがつけられた。

「ありがとう。あなたも今日も美しいわ」
「嬉しいよ」
 言って、彼はセレスティーンの頬に軽く口づける。

 くすぐったい気持ちでセレスティーンはふふっと笑みをこぼす。

 彼はいつもこの花園で彼女を待ち受ける。
 そうしておいしいお茶を一緒に楽しんだり、馬車で景色のいい場所に出かけたりとひとときのデートを楽しむのだ。

「早く君に本当に会いたい。もうすぐそれが叶うんだ」
 セレスティーンを抱きしめ、彼は言う。
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