虐げられた令嬢は貴公子の夢を見る ~気がついたら幸せな結婚が決まっていました~
 葛藤しながら屋根裏の自分の部屋へ向かうと、狭く急な角度の階段の下にタリアーナが待っていた。

「お嬢様も夜会に行かれるのでしょう? 御準備のお手伝いに参りました」
「……でも」
 手にしたずたぼろのドレスを手に、セレスティーンはうつむく。

「とにかくお部屋へ」
 促され、階段を上って部屋に入る。
 と、その目が驚くべきものをとらえた。

「嘘……」
 部屋の中にはトルソーがあり、そこに華麗なドレスが着せられていた。

 ローズピンクに繊細なレースがあちこちに施され、そばに置かれたケースにはパールのイヤリングとネックレスが準備されている。

「素敵なドレス! あの奥様がこんななドレスを用意してくださるなんて!」
 絶対に違う、彼が用意してくれたんだ、とセレスティーンは思ったが、言葉にすることはできなかった。彼のことは誰にも言わない約束だったし、言っても信じてもらえないだろう。

「早く着替えましょう!」
 タリアーナに促され、急いで着替えた。
 ドレスは体にぴったりで、セレスティーンのためにあつらえたかのようだった。

 ほっとして玄関に向かうと、エマニーズとティアリスはあっけにとられてセレスティーンを見た。
 が、すぐに我に返って彼女をにらみつける。
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