虐げられた令嬢は貴公子の夢を見る ~気がついたら幸せな結婚が決まっていました~
「あんた、どこからそれを盗んだの!?」
「盗んでなんかいません!」

「あんたなんかがそんな上等なドレスを持ってるわけないじゃない!」
「これは……借りたんです」

「誰から借りたっていうのよ。あんたに貴族の知り合いなんていないでしょ!」
 ふたりから次々と責められ、セレスティーンは言葉に窮した。

 見送りにきたタリアーナはおろおろと立ち尽くす。女主人であるエマニーズ、お嬢様であるティアリスに反論するなど、彼女にはできない。

「こんなもの!」
 ティアリスがドレスの袖をひっぱる。

「やめてください!」
「あんたには不釣り合いよ!」
 袖がびりっと破れ、とれかかる。

「せっかく私がドレスを買ってやったというのに!」
 エマニーズが腰のリボンを引っ張ると、ほどけて床に落ちた。それを彼女は踏みにじる。

「この流行のレース! 私にこそふさわしいのに!」
 レースをひっぱられ、繊細なそれは悲鳴のように音を立てて裂けた。

「やめて……やめてください!」
 ドレスはもはやぼろきれと化し、セレスティーンの目には涙が浮かんだ。
 せっかく彼が用意してくれたのに。
 綺麗なドレスで彼に会えると思ったのに。
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