虐げられた令嬢は貴公子の夢を見る ~気がついたら幸せな結婚が決まっていました~
ほつれた糸をはさみで切り、大きく開いた胸元は、タリアーナが自分のショールを持って来て、隠すように肩にかけてくれた。
「本当ならもっと前にデビュタントのセレモニーで華々しく社交界にデビューできたものを……」
タリアーナの悔し気な声に、セレスティーンの胸が熱くなった。自分のためにそんなふうに思ってくれるのがうれしい。
「いっそ欠席いたしましょう。急病ということで使いを出せばなんとか」
「いいえ。今日はどうしても行きたいの」
夢の中の彼が、行けばいいことがあると言っていた。きっと彼に会えるということだろう。もし会えなかったとしてもまた以前と同じ苦しい日々が続くだけのことだ。
「ですが、悪い噂が流れたりしたら」
「とっくに流れてるわ。どうせ傷物だもの、どんな評判になってもいいわ。私はお茶会や舞踏会に行くことはないから噂も聞こえてこないから」
セレスティーンの言葉に、タリアーナは渋々頷いた。
実際にはエマニーズとティアリスが面白おかしく聞かせて来るし、タリアーナもそれを知っている。だが、セレスティーンの意志を尊重してくれたのだ。
玄関を出ると、荷馬車がセレスティーンを待っていた。
「お嬢様、こんな馬車ですみません」
「気取った貴族の馬車よりあなたの馬車に乗れて光栄よ」
謝罪する従僕に笑ってみせると、従僕がつられて笑う。
「本当ならもっと前にデビュタントのセレモニーで華々しく社交界にデビューできたものを……」
タリアーナの悔し気な声に、セレスティーンの胸が熱くなった。自分のためにそんなふうに思ってくれるのがうれしい。
「いっそ欠席いたしましょう。急病ということで使いを出せばなんとか」
「いいえ。今日はどうしても行きたいの」
夢の中の彼が、行けばいいことがあると言っていた。きっと彼に会えるということだろう。もし会えなかったとしてもまた以前と同じ苦しい日々が続くだけのことだ。
「ですが、悪い噂が流れたりしたら」
「とっくに流れてるわ。どうせ傷物だもの、どんな評判になってもいいわ。私はお茶会や舞踏会に行くことはないから噂も聞こえてこないから」
セレスティーンの言葉に、タリアーナは渋々頷いた。
実際にはエマニーズとティアリスが面白おかしく聞かせて来るし、タリアーナもそれを知っている。だが、セレスティーンの意志を尊重してくれたのだ。
玄関を出ると、荷馬車がセレスティーンを待っていた。
「お嬢様、こんな馬車ですみません」
「気取った貴族の馬車よりあなたの馬車に乗れて光栄よ」
謝罪する従僕に笑ってみせると、従僕がつられて笑う。