虐げられた令嬢は貴公子の夢を見る ~気がついたら幸せな結婚が決まっていました~
「じゃあ、行きますよ!」
「お願いします」
「行ってらっしゃいませ!」
 タリアーナに見送られ、セレスティーンは出発した。





 王宮に到着したセレスティーンは門番に見とがめられてもめた。古ぼけた娼婦まがいのドレスは場違い過ぎる上、乗って来たのは荷馬車だ。不審者と思われても仕方のないことだった。

 招待状を見せると、門番は何度も何度も確認したあと、ようやく彼女を通す。
 会場に入ると、エスコートのないセレスティーンはざわめきとともに白い目で見られた。

「一人でいらっしゃるなんて」
「御覧になって、あのドレス……に似た変なお召し物」
「まさか仮装のおつもりかしら」
「今日のドレスコードには仮装はありませんでしたわよね?」
「あの方ですわね。傷物と噂の」
「あれが! まあ、首筋に怖ろしい痣が」

 もはや陰口ですらなく、公然とセレスティーンをけなす令嬢たち。
 セレスティーンは聞こえないふりをして会場を見渡した。

 探すのはただ一人、紫の髪の彼。
 だが、どこにもそんな人は見当たらない。

 何人か頭に羊のような曲がった角をつけ、青や緑の髪をしている人がいた。今日は魔族の国との扉が開く日だ。本当に魔族かもしれない、とセレスティーンは緊張した。
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