虐げられた令嬢は貴公子の夢を見る ~気がついたら幸せな結婚が決まっていました~
「今日は王子殿下がご参加なさるのよね」
 そんな声が聞こえてきて、セレスティーンは聞き耳を立てた。

「名誉ゲストの入場セレモニーがあるじゃない? そのあとにいらっしゃるようよ」
 そんなのがあるんだ、とセレスティーンは驚いた。

 人々の目から逃れようと柱の陰に隠れるようにして開会を待つ。
 儀典局長による開会セレモニーのあとはデビュタントの少女たちの入場セレモニーだ。

 楽隊の奏でる音楽が会場に響き、少女たちが白いドレスで恥じらいながら入場する。初々しい彼女らを、セレスティーンはうらやましく眺めた。

 母が生きていたら自分も母とドレスを選び、胸をときめかせて社交界にデビューしたのだろう。
 実際には誰が着たのかもわからない古着で柱の陰に隠れているのが現実だ。壁の花どころの話ではない。

 続いての名誉ゲストの入場セレモニーでは外国の大使や貴族が入場し、儀典局の男が大声で彼らの紹介をした。
 最後に魔族の国のアシュディウム大使一行が入場したが、どこにも紫の髪の人物はいなかった。

 その後、主催の国王が王子殿下とともに入場となった。
「国王陛下のご入場!」
 儀典局長の声とともに奥の扉が開けられ、国王が現れた。その後ろには二十歳ほどの金髪の青年が控えている。紫の髪でもなく、風貌は夢で会った彼とはまったく違っていた。

 会場にいた全員が陛下に頭を下げ、柱の陰にいたセレスティーンも頭を下げる。
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