虐げられた令嬢は貴公子の夢を見る ~気がついたら幸せな結婚が決まっていました~
 彼はそのまま国王陛下の前に出て立ったままお辞儀をした。立礼が許されるのは彼の国(アシュディウム)この国(サンレード)よりも歴史がある強国で、つまりは格上だからだ。

「本日はお招きいただき感謝申し上げます。遅れましたこと誠に申し訳なく存じます」
「アーロン殿下の御多忙は存じております。よくぞおいでくださいました。貴国では息子が世話になりました。今宵はどうぞお楽しみください」

 陛下への挨拶を終えると、オーケストラがダンスの曲を奏で始めた。
「なんて素敵な方」
「魔術学校では殿下に魔術の指導もなさったとか」
 アーロンをうっとりと眺めて女性たちが褒める。

「なんて美しい方なの」
「魔族といえども皇子よ」

 エマニーズがティアリスにけしかけるようにささやく。
 セレスティーンもまた、アーロンを見つめていた。

「なんだ、お前も結局は外見に騙されるのか」
 不満そうなドルファスの声に、セレスティーンは我に返った。

「まあ、節操のないこと」
「義理とはいえ、こんな女が娘だなんて」
 ティアリスとエマニーズが口々に罵る。

「お前は俺の婚約者なんだからな。それをたっぷりわからせてやる。行くぞ」
 ドルファスが手を引っ張ったときだった。

「まあ、アーロン殿下がこちらに」
 エマニーズがつぶやく。
< 25 / 44 >

この作品をシェア

pagetop