虐げられた令嬢は貴公子の夢を見る ~気がついたら幸せな結婚が決まっていました~
 目を向けると、ざわめく女性たちの間をアーロンが歩いてくるのが見えた。
 彼がセレスティーンに正対し、ざわめきは一段と大きくなった。

「汚い手を放せ」
 アーロンは金の瞳に憎悪を燃やしてドルファスをにらむ。

「い、いや、こいつは私の婚約者で……」
「手を放せと言っている」
 他国とはいえ、皇子だ。再度の命令に、ドルファスは悔しそうに手を放した。

 アーロンは目に穏やかさを取り戻し、セレスティーンを見る。
「セレスティーン。会えてうれしいよ」

 彼女はとっさにショールを抱きしめるようにしてドレスを隠そうとした。

「俺があげたドレスはどうしたの?」
「……破れてしまって」
「嘘が下手だな。まあいい、とにかく君に合うドレスを」

 彼はぱちんと指を鳴らす。
 同時に光が放たれ、セレスティーンの目が眩んだ。光は一瞬だったが、治まってからも目がちかちかした。

「お前……」
 驚いたドルファスの声に、セレスティーンは首を傾げる。
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