虐げられた令嬢は貴公子の夢を見る ~気がついたら幸せな結婚が決まっていました~
「そうです、心優しいティアリスはそれをずっと大切に持っていたんです!」
 ティアリスの主張にエマニーズが賛同する。

 アーロンは顔をしかめ、それからセレスティーンに顔を向ける。
「念のために聞くが、そうなのか?」
「違います!」

「だろうな。どうせ強奪したんだろう。お前にそれはふさわしくない。かわりにもっと似合いのものをくれてやろう」
「プレゼントをいただけますの? どのようなお品かしら」
 ティアリスは目を輝かせる。

 アーロンが指をぱちんと鳴らすと紫水晶のネックレスは消え、代わりに大蛇が現れてティアリスの首をマフラーのように巻いた。

「きゃああああ!」
 ティアリスは悲鳴をあげて大蛇を振り払う。
 大蛇が床に落ちる寸前、アーロンが指をぱちんと鳴らして消した。

「生き物は大切にしろと教わらなかったのか」
 アーロンは鼻をふんと鳴らして笑った。

「ま、魔術でございますか、さすがでございます」
 マルセルムがこびへつらうようにもみ手をしながら言う。

「ドレスにももっと装飾が必要だな」
 アーロンはまた指を鳴らす。
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