虐げられた令嬢は貴公子の夢を見る ~気がついたら幸せな結婚が決まっていました~
「……そうでございました」
 ドルファスはにたりと笑った。若い娘が嫁になるならば、セレスティーンでなくともいい、むしろ妹のほうが若く傷物の噂もない。

「私は婚約なんてしてません!」
「そうですよ、まだ若いのにこんな汚い男なんて、娘がかわいそうです!」

「ではなぜセレスティーンをこの男と結婚させようとした?」
「そ、それは、そのほうが幸せになれると……」
 アーロンににらまれ、しどろもどろでエマニーズが言い訳する。

「相性があるもの、セレスティーンは良くても私は無理です!」
「もう黙れ。陛下の言葉を否定するなど、身の程を弁えよ」
 王子に命令されて、エマニーズもティアリスもぐっと押し黙る。

「そなたも控えよ。こちらはアシュディウムの皇子。次期皇王であり次期魔術師王となられるお方。本来なら口を利くどころかお目見えもならぬ高位のお方ぞ」
 王子に言われ、ドルファスは口をへの字に曲げて黙った。

「余興は終わりだ。今宵はアシュディウム魔術皇国とサンレード王国の和平条約の再調印の祝いの日でもある。みなで楽しもうぞ」
 アーロンが言い、人々ははっと我に返った。

「我が婚約者を祝福せよ!」
 アーロンが右手を掲げると、輝く花びらが会場にふわふわと舞った。
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