虐げられた令嬢は貴公子の夢を見る ~気がついたら幸せな結婚が決まっていました~
「それはダメ!」
「どうして? 家を探してもらえるのに」

「母上に怒られちゃう。……きっともうすぐ迎えが来るから」
「だけど、ここにいると冷えてしまうわ。とりあえず一度うちにおいでなさい」

「……うん」
 セレスティーンは彼を連れて屋敷に戻り、こっそり彼を連れ込み、メイドに相談した。

 メイドたちはセレスティーンが連れてきた彼にホットミルクを入れ、一緒に面倒をみてくれた。
 出されたクッキーを頬ばって温かいミルクを飲んだ彼は、それで一息つくことができたようだった。

 台所の片隅で椅子に座り、彼はしょんぼりとうなだれる。

「俺、迷惑だよね……迷惑かけるなって、いつも父上に言われてきたのに」
「大丈夫よ。困ったときはお互い様って昔から言うじゃない」

「そうなの?」
「そうよ。だから今度私が困ったときはあなたが助けてね」

「わかった。約束する!」
 黄金の目を輝かせ、彼は言った。

 夜中、屋根裏で彼と一緒にベッドに入ろうとしたときだった。
「俺、今夜中に帰れなかったら二度と帰れないかもれしない」
 べそをかきながら、彼はそう言った。

「どうして?」
「扉が開くのは今日だけなんだ。今日が無理なら一年後。そうなったらもう見つけてもらえない気がする」
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