虐げられた令嬢は貴公子の夢を見る ~気がついたら幸せな結婚が決まっていました~
「魔族の成長は遅い上に一定していない。俺はあのときすでに人間の年齢では成人を超えていたが、外見はずっと子供のままだった。君に恋をしたことで、いっきに成長したんだよ」
「そんなことって」

「魔族は魔術に長けていてね。ずっと魔術を訓練していた。そのかいあって次期魔術師王になる資格を得た。だからようやく君を迎えに来ることができたんだ」
「魔術師の王に……?」

「そう。皇王であり現在の魔術師王でもある父に、君と結婚したいなら魔術師王の資格を得ろと言われた。魔術師の王は血筋では決定しない。魔術の才が重要なんだ」
 知らない世界のことすぎて、セレスティーンは目をぱちぱちさせた。

「皇王がいるのに魔術師の王って、混乱するわ」
「魔術師王は君の世界でいうところの教皇かな。王様がいて、教皇がいるでしょ。我が国では兼任することもあるんだ」

「そうなの……なんだか大変そう」
 現実感がなくて、そんな感想しかでなかった。

「修行中は人間の世界に来るのは禁止されていて、会えないのはつらかった。一年前、ようやく夢への干渉魔術を習得して君に会うことができた。だが夢でしか会えないから君は俺を現実の存在だと思ってくれなかった」
「夢だもの……私の願望だと思っていたわ」

「そう思われても仕方がない。でもそのおかげで君は正直に窮状を話してくれたね。干渉できる範囲で少しでも改善できるようにはしたつもりだけど」
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