虐げられた令嬢は貴公子の夢を見る ~気がついたら幸せな結婚が決まっていました~
「やっぱり、本当にあの食事はあなたが用意してくれたのね。ドレスも……」
「意地悪な人たちのせいでろくに食事もとれないと言っていたから。もっと早くに君を連れ去れたら良かったのに。まだ正式な婚約もしてないのだからと許されなかった」

「これは婚約の印なのではないの?」
「当時の俺はまだ子どもだったからね。仮の婚約程度だ。この印をつけたことで、君が傷物と言われたことに衝撃を受けた。あちらでは考えられないことだ。印をつけておけば、ほかの魔族からちょっかいを出されずに済むんだが、人間には効かなかった。申し訳ない」

 セレスティーンはそっと首筋に手を当てた。
「だけど、この痣のおかげで娼館に売られずにすんだわ。あなたが私を守ってくれたのよ」
「娼館だと……?」
 アーロンの目に怒りが燃える。

「あいつらにはもっとお仕置きが必要だな」
「お仕置きって」

「君は気にしないでいいいんだよ。嫌なことは全部忘れて」
 アーロンは優しく微絵み、彼女の頬を柔らかく撫でる。

「和平延長の交渉で、条件のひとつに俺と君の婚姻を入れた。確実に結婚できるようにするためだ。あんなクズ男とアシュディウムとの和平、天秤にかけるまでもなく国王は和平をとるからね」
 自分のような存在がそんな重要な条約の条件になるなんて、セレスティーンはただただ驚く。
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