虐げられた令嬢は貴公子の夢を見る ~気がついたら幸せな結婚が決まっていました~
 朝食の準備ができたら食堂へ運ぶのだが、そこで給仕をするのはセレスティーンの仕事だった。指名したのはエマニーズで、いじめるためにそうしたのだ。

 ワゴンに人数分のパンを載せて運び、トングで父、エマニーズ、ティアリスの皿に載せる。

「遅いわよ、グズ」
「申し訳ございません」
 セレスティーンは素直にティアリスに謝る。難癖をつけていじめたいだけだから、何をどう対策しても意味がない。

「まったく、家に置いてやってるだけでも感謝してほしいものだわ」
「ありがとうございます」
 セレスティーンはエマニーズに頭を下げた。

 父は今日もなにも言わない。いじめないだけましだ、とセレスティーンはいつものように自分に言い聞かせる。

「明日の夜会にはセレスティーンを連れて来るようにと下命を(たまわ)った」
 突然のマルセルムの言葉に、セレスティーンは息を呑んだ。

 今まで一度も夜会に参加させてもらったことはない。しつけのなってない娘は家の恥だとエマニーズに言われ、いつもセレスティーンは置いて行かれた。

「陛下主催の夜会に? なぜ?」
 エマニーズが不快そうに顔をしかめる。

「知らんよ、陛下の直々のお召しだ。行かせないわけにはいくまい」
 マルセルムは無表情に答える。
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