喜劇・魔切の渡し

金子(←姓じゃなくて名前)からの電話

良夫「(ステテコ姿になってから)まーだ。まずビール1本飲んでからだ」
為子「え?もう飲んじゃうの?じゃあ風呂上りはどうすんのよ?」
良夫「もう1本飲めばいいだろ?ったく、何本だろうと構やしないじゃないか」

良夫、台所に来て冷蔵庫の扉を開ける。

悪魔「(その良夫に)ばかやろ、風呂に入(へえ)れって云ってんだよ」
天使「(為子に同様頭を下げて)良夫さん、お願いしますだ」
為子「(良夫の脱いだ服をハンガーに掛けながら)冷蔵庫には配給分しか入ってないわよ。小瓶が1本だけ」
良夫「(冷蔵庫を開けて)あ、ホントだ。かあーさん、何で小瓶1本だけなのよ。俺に感謝してるなんて云っておいてさ」
為子「あんたの今の稼ぎじゃ仕方ないでしょ。もっと欲しければこれよ、これ」

為子、エプロンのポケットから駒を出して翳す。

良夫「ちぇっ、やっぱり当てつけだったんじゃないか。(ビールを冷蔵庫から出したり入れたりしながら)うーん、いま飲むべきか、飲まざるべきか……」
為子「(台所に戻って来て)いつまでやってんのよ。入らないんだったら和子先に入れるわよ」
良夫「うーん、だからやっぱ風呂に入ったあとで飲みたいし……しかしいま飲みたいし……」
悪魔「えーい、じれってえな。(天使に)おい、良夫のやつ引っ張って来て入れちまおうか」
天使「いんにゃ、なんねえ。霊のフィジカル行使はご法度だがね」

この時居間に置いてある電話が鳴る。

為子「あら、電話。ちょっとあんた出て。わたし手が離せないんだから(茶碗やら皿を出している)」
良夫「ああ、出るよ。またお前らのナニからじゃないのか。ったく……」

良夫、電話に向かう。途中で悪魔が義男を掴まえようとするが天使がこれを制す。
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