空が泣く
昼はまだ暑いが風が涼しくなってきた。日が暮れると過ごしやすい気温になる。

一人草原を歩く。背の高い穂をつけた草が茂る。

蝉に変わって、コオロギの鳴き声が辺りに響くようになった。空を見上げる。

煌々と月がてっている。明るい夜だ。

西の方に目をやると、空の色が暗くなってきているのがわかる。雲だ。風に乗って、みるみる月を覆い隠していく。

重い鉛色の雲が上空を覆っている。

額に当たるものがある。パラパラと周りの草を弾く音。降ってきた。大粒の雨。

最初は疎らだったが、どんどん体に当たるようになる。

そのうち、空が泣くような豪雨となっていった。

連続する雨粒に種々はすっかり頭をさげ、落ちてきた雨は全ての物に跳ね返り、辺りは雨飛沫で霞んでいた。

だいたい、この雨では目の前もあまり見えない。

気温も下がり、濡れた服が重く冷たく感じ始めた。当たる雨粒も痛い。

もう上も見上げられず下を向き、後頭部で雨の勢いを感じていた。

靴が濡れて、水が浸出してきた。

しばらく耐えていると、後頭部に当たる雨の勢いが減ってきたことに気づく。やがて雨粒も疎らになり、草も水滴を帯びながら頭を上げていた。

見上げると、雲が薄くなり、狭間から月が光るようになっていた。

雨が上がった。辺りはすっかりと涼しくなった。

いつの間にか鳴くのをやめていたコオロギが、再び鳴き始めた。

水を湛えてグチョグチョ言う靴で踏みしげながら、水溜りが多くなった草原を歩いて行く。
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