愛したがりの若頭と売られた私
買い物をして帰ろう言われ、デパートに向かう途中の車内。

茉咲の腰を抱き、ぴったりくっついている夜凪。

「――――茉咲、ごめんね」

「え?どうして謝るんですか?」

「指輪も、結婚式も…
もっとちゃんとしたかったよね?
本当は指輪を二人で決めて、ウエディングドレスも茉咲の好きなのを着せたかった。
でも仕事が忙しくて、今日強行スケジュールになったんだ。
かと言って、落ち着いてからにしようってのもしたくなかった。
早く“目に見えるモノが”欲しかったから」

コツンと額をくっつけ、切なく話す夜凪。

そんな夜凪に茉咲は、ゆっくり首を横に振った。
「とんでもない!
私は嬉しかったです!
こんな素敵な指輪も、結婚式も、それどころか結婚すること自体も諦めてたし、私には一生縁のないことだと思っていたので。
ありがとうございました!」

そう言って微笑むと、夜凪は嬉しそうに「ありがとう!」と笑った。


デパートに着き、茉咲に似合いそうな服、靴、バッグ、更にアロマやちょっとした小物等……値段も見ずに買っていく、夜凪。
その後ろでは、池治を含めた三人の部下が紙袋を沢山抱えている。

「夜凪さん!」

「ん?
何かある?他に欲しい物」

「そうじゃなくて!
買い過ぎです!」

「え?そう?
だって、見てたら茉咲に似合いそうな物ばかりだから……!
ピアスホールあいてるのに、ピアス持ってないし(笑)
さっき、結婚式場の従業員に聞くまで、僕も気づかなかったよ(笑)」

「あ…これは……その…
ピアスあけたら、運気が上がるってネットに書いてあったの見て……」

「そっか!(笑)可愛いな!
…………ほら、もっと買おう?」

「あ、ほんとにもう……」

「そう?
じゃあ…あとアクセサリーだけ!
せっかく、ピアスあいてるんだから!」

「はい、ありがとうございます/////」


「――――あれ?江戸川様?
お忘れ物ですか?」

今朝来たばかりなので、びっくりしたように従業員が近づいてきた。

「あぁ、ピアスを買ってあげたいなって!」

「さようですか!
では、こちらへどうぞ?」

夜凪と茉咲は、ゆっくりガラスケースの中を見ていた。


「え……
ね、ねぇ、あれって…お姉ちゃん?
ねぇ、ママ!
あれ、お姉ちゃんじゃない!?」

そこに、茉咲の育ての母親と妹・カヲリが通りがかった。

「は?
茉咲がこんな高級な店にいるわけないわ!
―――――嘘…でしょ…?」

母親とカヲリの視線の先には、セレブ御用達のジュエリー店内で、仲良さそうにジュエリーを選ぶ夜凪と茉咲がいた。
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