愛したがりの若頭と売られた私
それから茉咲は―――――カウンター越しに見つめられながら、遅めの朝食を作る。

「今日も、美味しそう……!
…………頂きます!」

一緒に朝食をとる。

「……/////」

夜凪を見ていると、本当に“ヤクザの若頭”なのか疑ってしまう。
それくらい、甘くて穏やかな生活を送っている茉咲。

稲元家にいた時とは、比べ物にならない。

そして夜凪は、一つ一つの所作がとても綺麗だ。

“頂きます”と手を合わせる姿や、食事をする姿も。
更に、食べた後の皿も綺麗だ。

今日は、ご飯と揚げナスの味噌汁と鯵の塩焼き、小松菜のごま和え、金平ごぼう。

この二週間でわかったことは、夜凪はこうゆう普通の和食が好みだということだ。

「………」
(相変わらず、綺麗な骨……)
鯵の塩焼きは、骨だけが綺麗に残っている。

身は全くなくなって、見た目がとても綺麗だ。

「…………ごちそうさま!
美味しかった!やっぱ、揚げナスの味噌汁は最高だね!
ごま和えも金平も、美味しかった〜!ありがとう!」

そして必ず、感想と礼を言ってくれる。

「お粗末様でした」
茉咲が微笑むと、夜凪も微笑み頬杖をついて茉咲を見つめだす。

茉咲はとても緊張しながら、食事をするのだ。

夜凪の真似をして食事をするが、どうにも上手く出来ない。
どうすれば、あんな綺麗な所作が出来るの?

そして―――――緊張で少し手を震わせながら食事をして片付けた後は、時間まで夜凪の膝の上でひたすら夜凪に愛でられるのだ。

「あ!そうだ!
次の土曜日は、茉咲バイトないよね?」

「はい」

「僕もね。
休みなんだ!
だから、一日中いちゃいちゃしようね〜」

「はい/////」

「何しようか?
デート行く?
それとも………一日中、ベッドの上で過ごす?(笑)」

「夜凪さんのしたいことをしましょう」

「うーん…
“僕のしたいことは”とんでもないことだよ?(笑)」

「え?」

「一日中ベッドの上で過ごして、片時も離れず、見つめ合って過ごしたい。
二人だけの空間に、閉じこもりたい」

「良いですよ」

「いいの!?」

「はい」

「何処か、行きたい所とかない?」

「特には」

淡々と返事をする茉咲を見て、夜凪は悲しくなっていた。

きっと……あいつ等のせいで、茉咲自身の“欲”をずっと封印され続けたのだろう。

夜凪は、茉咲の頭をゆっくり撫でた。


「じゃあ、その日はいっぱい愛し合おうね!」
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