愛したがりの若頭と売られた私
「何か飲まれますか?」

男に言われ、茉咲は「いえ、大丈夫です」と答えた。
そして続けて「あの、私はなぜここに呼ばれたんですか?」と問いかけた。

「ご両親に、聞いてないんですか?」

逆に聞き返され、茉咲は頷いた。
「はい…」

「ほんっと…どこまでも……」
男はポツリと呟き、茉咲に「俺からは言えません。でも、ちゃんと説明があると思います」と言い頭を下げてきた。


しばらく待っていると………男性が来て、茉咲の前のソファに腰掛けてきた。

「初めまして!
江戸川 夜凪と言います!
突然、お呼びして申し訳ありません!」

そう言って、優しく微笑んだ。
その表情があまりにも綺麗で、思わず茉咲は見惚れていた。

「……/////」
(カッコいいし、綺麗…//////)

「何も説明なく、来られたとか」

「あ、はい」

「では、僕が単刀直入に言いますね!
茉咲さん。
あなたは、僕に“買われた”んです……!」

「………」

「………」

「………は?」
開いた口が塞がらない。


何を言ってるの?

“買われた”って、何?

え?え?
人間が買われるなんて現実にあるの?


「何がなんだかって顔だ…(笑)」

「………」

「フフ…数年前に君のお父様が立ち上げた、会社」

「え?」

「去年ある不正が発覚して、多額の借金をおったことは?」

「はい、知ってます。
でも、良いところにお金を借りたからもう大丈夫だって……」 

「その金を借りた会社は、僕の管轄の会社です。
しかし、多額ですからね……
返せるわけもなく……
それで僕が、君のお父様に打診したんです。
“茉咲さんをくれるなら、借金チャラにしてあげる”って。
そしたら……!
何て言ったと思います?(笑)
“喜んで!!”だって!」

「そうですか…」
(そうゆうことか…)

「最低・最悪なクズですよ。
茉咲さんの両親」

「………」

「あ、ごめんね。
仮にも君の両親のことを、そんなふうに言っちゃって」

「いえ…」

「てことで!
君は、僕に買われたんです」

「そうですか…
私は、何をすればいいですか?」

「………」
あまりにも淡々としている茉咲に、夜凪の方が悲しくなる。

「え?江戸川さん?」

「驚いたな…
全く、取り乱さないなんて…(笑)」

夜凪は意味深に、フッ…と笑った。

「え?」


「茉咲さん。
あなたがすべきことは、一つです。
“僕にただ、愛されること”
それだけですよ……!」

そして茉咲を見据え、言い聞かせるように言った。
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