愛したがりの若頭と売られた私
「―――――若様〜♡」

夜凪は、イルマの店に来ている。
イルマは、この辺一帯を仕切るクラブの女性オーナー。

そして夜凪の“自称奴隷”
夜凪に心底惚れていて、絶対服従を誓っている。

抱きつこうとするイルマを、押し返す。

「おい、俺に近づくな。
お前の香水、きついんだよ!
茉咲にバレたら、傷つけるだろ!」

「はーい♡
ごめんなさーい♡」
どんなに夜凪が酷い言葉を浴びせても、嬉しそうに笑う。

「で?
茉咲の元家族は?」

「うーん…あんま、使えないわね(笑)」

「そうか」

「でも、任せて!
使えるようにするから。
若様の宝を傷つけた代償は、必ず払わせるわ。
生き地獄の人生を歩ませてあげる…!」
楽しそうに話す、イルマ。
ワクワクしているように見える。

イルマは、思考がかなり狂っていて、サディスティックな女性。
相手の苦しむ顔を見るのが、最高の幸せだ。
(しかし夜凪に対して“だけは”例外)

「頼むよ、イルマ」
ふわりと微笑む、夜凪。

「……/////
何これ、その表情だけで死ぬ//////」
顔を高揚させる。

「キモい」


そして……店を出ようとする夜凪。
そこに堺部が声をかけてきた。

「若!お疲れ様ですっ!」

「あぁ。
茉咲は?」

「今、マンションにいます。
で、その茉咲さんのことで……」

あれから堺部は、ミハナに話を聞きに行っていた。
やはり、茉咲のちょっとした変化に気づいていたからだ。

「………とりあえず、また茉咲さんのことを探るような奴が現れたら、俺に連絡するように伝えてます」

「ん、わかった」

夜凪は、茉咲の待つ自宅マンションに帰った。


玄関を開け「ただいま〜」と声をかけながら、中に入る。
するとガチャとドアが開いて、茉咲が顔を出した。

「おかえりなさい、夜凪さん」

「フフ…ただいま!」
そう言って、抱き締める夜凪。
そして頬を擦り寄せた。
向き直って頬を包み込んだ夜凪は、啄むキスを繰り返す。

そこまで愛でてから、二人はリビングに向かった。

「夜凪さん、すぐに夕ご飯温めますね!」

「あ、待って!
こっちおいで?」

ソファに座った夜凪が、手招きをしてきた。
茉咲は返事をして、隣に腰掛けた。

「茉咲、僕に話すことあるよね?」

「え?」
(な、何…!?)

茉咲は、夜凪の鋭い視線に動揺していた。


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