愛したがりの若頭と売られた私
「え?」

愛される?
私を愛してくれるの?

「フフ…
僕、君がバイトしてるカフェによく行くんですが、知りません?」

「あ…」
(確かに、見たことあると思ってたけど……)

「早い話が、君に惚れたんです。
僕のモノにしたいなって!」

「嘘…」
(そんなわけない。
みんなそうやって、離れていく……)

「本当です。
いつも真面目で、一生懸命で、明るくて、笑顔が綺麗で可愛い!
君を見てると、仕事で疲れてても一瞬で癒されて、疲れがなくなるんです…!」

そう言って微笑む夜凪に、茉咲の方が癒されていた。
それくらい綺麗で、甘い。


「…………茉咲さん。隣、座っていいですか?」

「あ…はい//////」

ゆっくり立ち上がった夜凪が、茉咲の隣に座る。
そして、頬に触れてきた。

こんなに優しく触れられたのも、いつ振りだろう。

茉咲は思わず、涙を流していた。

夜凪の大きな手と温もりに、感激したから。

「あ…泣かないで?
大丈夫。
大切にするって誓います。
絶対に、傷つけたりしない。
形は汚い方法だけど、やっと手に入ったんだ。
もう…手放したくない……!」

「違うんです…」

「え?」

「嬉しくて……!」

「え……」

「ずっと…一人だったから…
優しさも、温もりも、居場所も…何もなくて、ずっと不安で……」

「そっか…
可哀想に……
大丈夫ですよ!
僕がずっと、傍で守りますからね……!」


“僕達の家に帰りましょう!”

そう言われ茉咲は夜凪に連れられ、部屋を出た。

「茉咲さん、荷物はこれだけですか?」

茉咲の腰を抱いた夜凪が、後ろをついてくる部下が引いているキャリーケースを見ていった。

「あ、はい。
と言っても、母が詰めていて、バイト帰りにそのままここに行けと言われたのでわからないですが…
でも私物はほとんどないので、恐らく…」

「そうですか…
まぁ…いい。
僕が何でも買ってあげますからね…!」

エレベーターに乗り、茉咲は隣の夜凪を横からそっと見上げた。

本当に綺麗な人だ。

「……//////」
(………でも、江戸川さんって何してる人なんだろ?)

お金を貸すくらいだ。
それなりの立場の人なのだろう。

「あ、あの!」

「ん?」

「江戸川さんは、何をされてる方なんですか?」


「あ…(笑)失礼しました。言ってなかったですね。
僕は、江戸組の若頭です……!」
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