愛したがりの若頭と売られた私
「茉咲、僕に隠し事や嘘は通用しないからね?
茉咲ってピュアだから、わかりやすいもん。
ほら、僕が言う前に“茉咲の方から”教えて?」

「た、大したことでは……」

「大したことでなくても、僕は茉咲の全てを知る権利がある」

「今日友人から聞かされたんですが、この前の私の休みの時に、二人組の女子大生に私が今度いつ出勤するかを聞かれたらしいです。
カヲリの居場所が知りたかったみたいで。
でも私は知らないし、友人も知らないと思うって伝えてくれたので…」

「うん、そうだね」

「し、知ってたんですか!?」

「堺部が茉咲の様子がおかしいから、友達に聞いたらしいよ」

「そ、そうなんだ…」

「ね?
茉咲には、隠し子や嘘は無理なんだよ?
……………で?どうして、堺部に言わなかったの?
それとも、僕に直接教えてくれるつもりだった?
違うよね?」

「大したことではないと思ったので…」

「大したことだと思うけど?
だって“元”妹の居場所を聞きに来たんだよ?
茉咲の“元”家族は、茉咲のこと恨んでるから。
茉咲を捨てたのは奴等なのにね」

「………」 

「とにかく、気をつけるんだよ?
まぁ…堺部がいるから、大丈夫だと思うけど」

「はい」

それから一緒に夕食を食べ、いつものように愛でられてから一緒に風呂に入りベッドに横になった。

「茉咲。僕はまた仕事に行くから、ゆっくり休んでね!」

「はい」

夜凪は必ず、夕食を食べに帰ってきて、茉咲を風呂に入れ、寝かせてから仕事に戻る。

「あの、夜凪さん」
腕枕をされ、頭を撫でられている茉咲。
夜凪を見上げた。

「ん?眠れない?
いつもは、ベッドに入ったらすぐに寝ちゃうのに(笑)」

「合間にわざわざ、帰ってきていただかなくて大丈夫ですよ?
お仕事終わるまで、起きて待ってますよ?私」

「そうなると、ほとんど茉咲と夕食食べれないし、夜中まで茉咲を持たせることになる。
そんなことしたくない」

「でも、面倒ではないですか?」

「まさか!?
茉咲に会えるんだもん、毎回楽しみだよ!
僕の世界の中心は“茉咲”だからね!」

「……/////」

本当に、甘くてとろけるような人だ。

“江戸川 夜凪という男を、甘く見ない方がいいですよ”

この、甘くとろける表情の中にどんな“恐ろしさが”あるのだろう。

そんなことを考えながら、ぼーっと夜凪を見つめていた。
 
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