愛したがりの若頭と売られた私

そしてまた後日。

バイト中に茉咲は、客から女性トイレの洗面台の水の出が悪いから見てくれと頼まれた。

茉咲が女性トイレに向かうと、女性二人がいた。

そして声をかけられた。

「すみません！！
カヲリのお姉さんですよね！！？」

「え……」

「こんなやり方、ごめんなさい！」
「でも、私達、困ってて！！」

「え？」

二人の話では、カヲリに金を貸してほしいと言われ、信じて貸したとのこと。
しかし、カヲリと連絡が取れなくなったらしいのだ。

「お姉さん、連絡先知りません！？」
「お金、返してもらわないと私達……」

「いくらですか？」

「「え？」」

「カヲリに、いくら借りたんですか？」

「私は７万で……」
「私は２５万です」

「わかりました。
明日……は、私バイト入ってないから、明後日またここで。
あ、でも……」
(堺部さんにバレるよね……)

あまりトイレを二人の女性と出入りすると、堺部に怪しまれる。

茉咲は、女性二人に「明後日、ここの棚の奥に封筒を入れておきます」と伝えた。

そしてこの日の帰り、堺部に“買い物をしたい”と告げ、デパートに寄ってもらった。

何故デパートかというと、基本夜凪からもらったカードでの支払いなので現金は必要ない。
なので銀行に行くと“金の使い道を”聞かれるからだ。

適度に服など見て回り、堺部にトイレに行くと伝えATMに向かった。

そして32万円おろし、封筒に入れバックにしまった。
「よし！！」

「………」
もちろんその姿は、堺部にはバレていた。


「―――――金？」

茉咲をマンションに送った後、夜凪に報告している堺部。
「はい。
ATMで、いくらかおろしてました。
でも、今日は何も買ってないですし」

「いくら？」

「すみません、そこまでは……
でも、1、2万ではなかったです。
10万以上はあったかと」

「堺部に内緒にして、おろしたっつうことは……」
「ご自分で使うためではないですね」
夜凪の視線を受け、池治も大きく頷いた。

「茉咲の性格を考えると、友人に貸すつもりとか？」

「しかし、その友人は今日は出勤日ではなくて、連絡した様子もないんです」

堺部の言葉に、夜凪が自身のスマホを確認する。
茉咲のスマホ内の情報が筒抜けだからだ。

「そうだな。
連絡したふうはねぇな」

「なので、組長。
ミハナって女に、茉咲さんに聞き出すように言ってます」

「ん、わかった」

「明日ランチに誘うって言ってたので、その時に聞き出すそうです」