愛したがりの若頭と売られた私
『――――池治?どうだった?』

ガウン姿の池治。
ミハナは裸でベッドに横になって眠っている。

ベッドから離れ、別の空間の窓際に移動し、電話をしている池治。

「やはり、堺部のいない所で密会していたようです。
若の推測通りでした」

『そう。
……………で?
俺の茉咲をたぶらかしたクソは誰?』

「名前は逸崎 恭兵。
先々月から入った新人です」

『あー、いたな。
いつざきって名札つけてた奴。
でも、全然そんな素振りなかったな。
茉咲も、そのクソも』

「えぇ。
ミハナさんにもバレないように密会してたみたいです。
ミハナさんは、この前たまたま見かけたらしいです。
完全に二人になれる時だけ、休憩スペースでお茶していたと……」

『へぇ~!
ある意味凄いな、茉咲。
フフ…さすが、俺の女!』

通話を切って、池治は息を大きく吐いた。

そして一方のミハナ。
池治にバレないように、メッセージを打ち“恭兵”に送っていた。


【茉咲ちゃんと逃げて!!】

そのメッセージを受け取った恭兵。
今は、カフェのロッカーにいる。

実はミハナは、茉咲と恭兵の関係を全て知っていた。
茉咲は、ミハナにだけは話していたからだ。

その時ミハナは“このことは絶対!堺部さんに話さないから!”と約束してくれていた。

しかし今回、池治に会おうと言われたことで茉咲に相談していた。

「隠し通すことは出来ないから、ありのままを話して」
そう伝えられていたのだ。

茉咲に“おそらく私のスマホは情報が筒抜け”だと聞いていた、ミハナ。
なので、恭兵にメッセージを送ったのだ。


悪魔のような夜凪の背後で、茉咲、恭兵、ミハナは動き出していた。


次の日。
茉咲が出勤すると、恭兵がいた。

「恭兵くん?
あれ?今日は、休みじゃ―――――――」

ガシッと茉咲の手を掴む、恭兵。

「え?恭兵…くん?」

「“バレました”」

「あ…」

「ミハナさんから、池治って人に会ったこと聞いたんですよね?
バレたんです!
…………ね?茉咲さん“行きましょ?”」

意味深に恭兵は茉咲を見つめ、手を引っ張った。

< 40 / 43 >

この作品をシェア

pagetop