愛したがりの若頭と売られた私
ベッドのスプリングが軋む音。
そして……茉咲の叫ぶような喘ぎ声が響いている、寝室内。

しかし茉咲の声は、段々掠れてきている。

「可哀想に、声出なくなってきてるね……(笑)」

「や…ぎさ…
も…やめ……」

「ダメダメ!
まだまだ、愛し合おうね〜」

「いや…助け……」

「助けない、助けない!
だーれも、ここにはいないよ?
俺と〜、茉咲だけ!」

「いや…ぁ…」

「それにしても……
こんな壊れてて、乱れてても、茉咲は綺麗だね〜
たーくさん、キスマークついてて綺麗…!
“茉咲は俺のモノ”って、主張してるみたい!」

「んぁ…や…ぁ……」

「浮気なんて最低だよ、茉咲。
俺は“茉咲一筋で、茉咲しか見てないのに”」

「あ…ん…ぁ……ぁあ…」

「とりあえずヤツは、ボロボロになぶって消すからね……!
俺の茉咲を口説くなんて………
あーーー!
また、吐き気がしてきた!!!
イライラするーーーー!!!!!」

茉咲は文字通り、夜凪に“抱き壊された”


――――――――――
――――――…………………

下着姿で、窓際に立ち煙草を吸っている夜凪。
スマホを操作し、池治に電話をかけた。

『はい』

「そっちはどう?」

『まだ、かろうじて生きてます。
どうされますか?』

「電話、代わって?」

『はい。
――――――――』

「もしもし?」

『……っ…茉咲…さ…は……?』

「は?
俺の茉咲の名前を気安く呼ぶな、クズ」

『は?
クズは…お前…だろ……』

「フフ…
でもほんっと、バカな奴だな〜お前」

『なん…で……わかっ…た?
俺、達の…行くとこ……』

「バカの考えそうなことくらい、考えなくてもわかる。
俺達は、ある意味プロだぞ?
素人の考えることなんて、手を取るようにわかるんだよ!」

『なぁ…頼、むから…
自由に、してやってく…れ……』

「………」

『俺…は、どう、なっても…い…から……』

「………」

途切れ途切れの恭兵の言葉に、夜凪の頭に蘇る。


『………夜凪さん!お願いします!
もう…二度とこんなことしないので、恭兵くんを許してあげてください!!
お願いします!!
バイトも辞めて、ずっと家にいますから!
夜凪さんしか見ないって誓います!!』



「お前等…揃いも揃って………!」

夜凪のスマホを持つ手に力が入り、画面がピキッと割れた。

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