愛したがりの若頭と売られた私
寝室に連れて行かれた、茉咲。

広い寝室に、大きなベッドが一つ。
色違いの枕が二つ置かれている。

「……/////」
(ベッド…一つ…
…………そ、そうだよね…//////
ふ、夫婦なんだし…
…………でもどうしてだろう…全然、嫌じゃない………)

ベッドに誘導され、寝かされた。
ベッド脇に腰掛けた夜凪が、茉咲の前髪を優しく払う。

「茉咲さん、ゆっくり休んでくださいね!
明日は、朝から忙しいので!」

「は、はい/////」

「茉咲さんが眠るまでここにいて、トントンしますからね! 
安心して、休んでください!」

ゆっくり胸の辺りをトントンされる。

今日初めて会った人なのに、恐ろしい人なのに……

(どうしてかな?
凄く、安心する………!)

今日は色んな事があり疲れているのもあるが、夜凪の温かさと優しさに、これ以上ない安心感が込み上がる。

次第に茉咲の目が閉じてきて……

スースーと寝息が聞こえてきた。

「おやすみ…茉咲……!」
夜凪は微笑み、茉咲の頭をポンポンと撫でて部屋を出ていった。


リビングに戻った夜凪の雰囲気が、別人のように落ちる。

そのままキッチンへ向かい、換気扇を回す。
そして煙草を吸い始めた。

『―――――せめて、利息だけでも…!!』

茉咲の育ての父親のことが、頭の中に蘇った。

多額の借金を返すため、夜凪の組の傘下の金融会社から借金をしていた、父親。

実は、茉咲に言ったことは半分偽りだ。

本当は“父親の方から”茉咲を差し出してきたのだ。

茉咲の写真を見せてきて『この子を好きにしていい。その代わり、利息だけは免除してくれ!!』と。

同じ“売られた”にしても“夜凪に言われたから”と“父親の方から”では、傷つき方が違う。

だから夜凪は、あんな言い方をしたのだ。

その後夜凪は、茉咲がバイトをしているカフェに向かった。
写真を見て、茉咲があまりにも綺麗で正直興味を持ったからだ。

一目惚れといえば、そうなのかもしれない。

そして通う内に、次第に茉咲に心を奪われたのだ。

だから夜凪は、父親に『借金をなしにしてやる。その代わり茉咲との縁を切り、今後一切関わるな』と告げた。


「ほんっと…最低な男………
……………両親も…俺も………」


ポツリと呟き、換気扇に向かって煙を吐いた。
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