リーチェルの約束
先程まで突っ伏していた目の前の机には、作りかけの道具や魔導書が散らばっている。私は魔法を研究している。研究した魔法や薬、そして道具はそれなりに人の役に立っている……はず。

また呪文を唱えて魔道具作りを再開しようとする私の手をユリナは掴んだ。そして、私の水色とピンクのオッドアイの下を指でなぞる。

「また隈が濃くなってる」

「ここ最近、魔道具制作の依頼がそこそこあったからね。でも昼間にちょこちょことは寝てたんだけど」

「ちょこちょこって言っても数分程度でしょ!?それじゃあ体壊しちゃうじゃないの!!おまけに睡眠だけじゃなくご飯も疎かにして!!」

ユリナの体はプルプルと震え、その顔は「怒ってます」と言いたげだ。そして、「きのこの豆乳スープ持って来るから待ってなさい。飲まなかったら承知しないから!」と早口で言うと部屋を出て行く。

「あ〜、これは大人しく待っておかないとさらに怒られるパターンだ」

私は一度研究を始めると、周りの音が聞こえなくなって何時間もぶっ通しで研究してしまう。その間は食事も睡眠も取らない。ユリナはこんな私を心配してくれる。
< 2 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop