リーチェルの約束
壁にかけられた時計を見る。時刻はもうすぐ午前零時になろうとしている。スープを飲んだらまた朝まで頑張らなきゃな……。

呪文を唱えて窓を開ける。どこか湿った風が肩ほどまである白い髪を揺らした。窓の外を見れば、明かりの消えた家と美しい星空が見えた。その星空を見上げながら呟いた。

「あの霧の中の人は、私のことを探してくれているのかな?」

ここは魔法が溢れる世界。私は二年前に名前と年齢以外の記憶を失ってしまった。そして彷徨っていたところをユリナに拾われ、町外れの小さなこの一軒家で暮らしている。

私はどんな人だったんだろう。そう考えることも少なくない。だから、魔法の研究を続けているんだ。記憶を取り戻す魔法を作り出すため!

(いつか、あの霧の中の人に会えたらな……)

失われた記憶の中、夢に見るほど想っている人。どんな人なんだろうと気になってたまらない。だから記憶が戻るように星に祈った。



それから数日後。私はユリナと共に王都に来ていた。私たちが暮らす町よりもずっと大きくて賑やかだ。色んなお店がたくさんある。

「王都でしか買えないスパイスがあるの!一緒に来て」
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