とおくてブルー
思い出
「えまちゃん、遊ぼー!」
「いいけど、何して遊ぶ?」
「鬼ごっこ!」
「やだ。りゅうくん、足遅いからつまんない」
「えぇ、そんな……」
私の心無い言葉に、流星はがっくりとしょげて泣きそうになる。
その頃の彼は、ひよわで、泣き虫で、おとなしくて、すぐ風邪をひいて、みんなからよくからかわれていた。
「りゅうくん、なんで泣いてるの」
「あ、えまちゃん……。それが、ね……グス……聞いてよ」
「なに? ハッキリ言いなよ」
「みんなが……グス……ひどいこと言うんだ……」
「だから、なんて?」
「ぼくはヘタだから、ボール遊びの仲間には入れないって」
「ふーん……たしかにりゅうくんヘタだもんね」
「え……えまちゃんまで、ヒドイ……」
「うそうそ、あんなやつらほっといて、わたしともっと大人の遊びをしよっか」
「えっ、大人の遊び?」
「そ、おままごと。わたしはおくさん。りゅうくんはだんなさん役ね!」
私と流星は家が近所ということもあって親同士も仲がよかった。
互いに一人っ子だったため、私たちは兄弟のようにいつもいっしょ。
互いの家で家族を交えて食事することもしょっちゅうあったし。
両親たちは私たちが結婚してくれたらなんてことを何度も口にしたりしたっけ。
「えまちゃん、大きくなったらぼくとけっこんしてください!」
「いや! りゅうくん泣き虫だもん」
「うえーん、えまちゃんにフラれたー!」
そういう時、気恥ずかしくなった私はきまって心にもないことを言ってごまかしていた。
口ではいろいろ言っていても、流星が隣にいてくれることは嬉しかったんだけどね。
むしろずっといっしょにいるものだとばかり思っていた。
無邪気な幼少期はあっという間に終わった。
小学校にあがっても彼との関係はあまり変わらなかった。
「りゅう、まだ食べてるの!?」
「えま……。僕ピーマン苦手でさ……」
「好き嫌いばっかり言ってたら大きくなれないよ? もっとガツガツいきなって」
「ごめん」
「あやまるところも、ダッサイなあ。男ならもっとシャキッとして!」
「う、うん。ごめんね……」
「ふん! 好き嫌いばっかりのりゅうなんてキライ!」
「えー! もっと男らしくするから、嫌いにならないで!」
「それは本当に男らしくなったらね」
「僕はずっとえまちゃんが好きだから……」
その言葉を聞くたびに、内心ではうれしくてうれしくてたまらなかった。
なんだかんだ言って、私も流星が好きだったんだよね。