今日、あたしは。
10.15
白いシーツの上で彼があたしを抱き締める。
見知った温もりがふわりとあたしを包んで、何だか少し切ない気持ちになった。
「年月が経つのって早い。もう25歳だもんな」
ぽつりと言葉を落とした彼に、あたしは「そうね」と相槌を打った。
彼と知り合って25年。
25年もの間、彼はずっとあたしの傍にいた。
親友よりも両親よりも1番深くあたしのことを知り尽くしていると思う。
いつも傍にいて、気づけばお互いがお互いを好きになって、彼氏と彼女の関係になって、付き合ってもう10年。
喧嘩したり笑いあったり……。彼とは付き合う前も付き合ってからも、数えきれないくらい沢山の思い出を共有している。
楽しかった恋人生活。
今日でそれも終わりなんだ……と思うと寂しくて、ちょっと泣きそうになった。
まさにブルー。感傷的になっている。
「真梨。俺、寝ちゃいそう」
「いいよ。寝れば?」
あたしは彼……昭太に腕枕をされながら小さく頷いた。
昭太はあたしの頭を優しく撫でて、さらにギュッと強く抱き締めてくる。
「うん。ゴメン……先に寝るわ。おやすみ」
昭太は申し訳なさそうに謝ると、あたしの隣でそっと瞼を閉じた。
昭太は申し訳なさそうにしていたけど、あたしからすると寝てくれた方が都合がいい。
最後の時間をゆっくり堪能できるから。
1人でじっくり考えて、彼が起きるまでに25年間あたしと共に歩んできたモノと別れる決心をつけたい。
少し寂しいけど、こうなることは産まれる前から決まっていたから。
だから潔くお別れだ。
今日、あたしは別れを告げる。
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