革命返し
手強いオトコトモダチ
「暑いね」
「うん」
蝉の鳴き声が煩い、夏真っ盛り。高校の校庭の外れにある、今は使われていない茶道室の隅っこ。開け放った窓から入ってきた風が、目の前に座っている男子のキャラメル色の髪をふわっと揺らす。
誘われるように顔を上げて見てみれば、甘く整った顔が日差しを浴びて眩しげに歪んでいた。女顔のくせに、気だるく着崩した制服のシャツから覗く腕の血管が何とも言えず男っぽい。
やば。カッコイイ……。
そんな気持ちでいっぱいになりながら、あたしは堪らず目を閉じた。あたし、千秋16歳が今欲しいもの。それは何を隠そう今あたしの目の前に居るこの男、同じクラスの玲哉だ。
あたしは彼がどうしても欲しい。だからこそ、この茶道室で頻繁に玲哉と密会してる。
まぁ、実際は密会なんて秘めたものじゃなく、放課後にココに寄る玲哉にあたしが勝手に付いて来てるだけなんだけど。
どっちにしたって、この茶道室で2人っきりの時にやることなんて大体いつも決まっている。
「革命」
「秘技、革命返し」
「うっわ!千秋の卑怯もの!」
「ふふっ。きたー!あたしの時代がっ!」
「いやいや、まだ分からないからね?」
大富豪。ババ抜き、七並べ、スピード。その他はオセロ、将棋、チェス。
うん。色気も何もない。何が悲しくて2人っきりの密室でこんな子供っぽいことをしなくちゃイケないのか。