たった一言の純情
人っ子一人居ないバス停の前。

乱れた息を整え、呆れた顔を浮かべるみっちゃんに苦笑いを向ける。


7時15分発。学校方面のバスに1番乗りで乗車。

それが私の半年前からの日課だ。

だからバス停にも1番始めに来なきゃいけない。


始めた理由は好きな人と会いたいからっていう至ってシンプルで不純な動機。

彼に一目惚れをして以来ずっと。平日は毎朝。


バスに乗って学校近くのバス停まで5分。その5分は私が好きな人と会える唯一の時間だ。


話せるチャンスもそこだけ。だから歩いても通える距離だけど、わざわざバスを使っている。


「たった一言の為だけに…。バカじゃない?」
「その一言が私に取っては大きいの」
「分かんないわー」
 

みっちゃんが暑そうに制服の中にパタパタと風を送り込みながら呟く。
首を傾げて心の底から理解出来ないって顔。


まぁ、みっちゃんがそうなるのも仕方がない。

彼と話すと言っても、たった一言。

その一言を交わす為だけに毎朝1番ノリでバスに乗るなんて、他人からは変わっているように見えると思う。

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