たった一言の純情
「来たね」
「うん…!」
そうこう話しているうちにバスが来た。
目の前に停まってドアが開く。
始発はココだから乗客はまだ誰も乗っていない。
ガラーンとして涼しいバスの中。
ソワソワした気分で中に乗り込む。
入って直ぐに座ったみっちゃんと別れ、慣れ親しんだ席を目指す。
当たり前のように空いているその場所。
座っていつもと同じく鏡を見ながら前髪をさっと整える。
次々に人が乗り込み、席が埋まり、バスのドアが音を立てて閉まった。
そこから始まる、彼との時間。
見て過ごすだけの5分間。
今日も変わらず彼は1番前の席に座っている。
思わず身を乗り出してみっちゃんを見ると、彼女は髪を耳に引っ掛けて声もなくニヤリと笑った。
何だかんだ言いつつ、私の姿を見ていて楽しいらしい。
バスで目が合うと大抵意味深な顔で笑われる。
いつもこんな感じ。