たった一言の純情
「ご乗車ありがとうございます。次は〜」
バスが走り出し、アナウンスが流れる。
他の乗客が楽しそうに小声で話してる中、視線を好きな人の方に向けたら、彼は姿勢良く座って前方を見つめていた。
きっと外の車や信号を見ているんだろう。
横顔が真面目な顔付き。
制服姿がカッコ良くて堪らない。
信号待ちで横を向いた拍子に顔を見れば、切れ長な一重に高い鼻。
諸に私の好み。
髪も制服もきちんとしていて爽やか。
全体が清潔感で溢れている。
今日も素敵。
バスの中での彼しか知らないけど、きっと真面目で誠実な人なんじゃないかなと思う。
他の乗客に声を掛けられているのをよく見かけるけど、彼はいつだって物腰が柔らかくて親切だ。
そもそも私が彼を好きになったきっかけだってそう。
具合が悪くて蹲ってしまった私に「大丈夫ですか?」と優しく手を差し伸べてくれた、それが始まり。
あの日の彼はまるで王子様。
一段とキラキラ輝いていた。
蹲っていた私を支えるように立たせると優しく、空いていた席に誘導してくれた。
降りる時も心配してくれたし、感謝しかない。
本当にいつもそう。