砂時計は止まらない
ペットとご主人様
1年前はこんなことになるとは想像すらしていなかった。それが率直な意見。
「今日は、ちょっと……」
畳の匂いが微かに香る部屋の中、窓から差し込んだ月の光が暗い室内を淡く照らす。
濃紺色の着物に身を包んだ、私より1歳年下で24歳の悠真。線が細く美しく、どこか儚げに見える彼は私の幼なじみであり元カレでもある。
彼の家が茶道の家元だとか、彼が次期当主だとか、そんなの付き合ってた当時ならまだしも今の私には関係がない。ただ1つだけ言えるとすれば“所詮、未来なんか誰にもわからない”ということ。
タイムマシーンなんて現在の技術じゃ到底作れっこないし、占い師や予言者だって予想を口に出すことは出来ても未来を的確に当てることは出来ない。
だからこそ、何の取り柄もない私は欠片程度すら予想していなかった。
「愛梨、ご主人様に逆らうの?」
まさか自分が悠真のペットになるなんて。
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