砂時計は止まらない


 「そっか。おめでとう」


 精一杯、笑顔を作って言った。私からのお別れの言葉。本当は嫌だ。でも、時の流れは止められない。


 結局、悠真と私は結ばれない運命だった。悠真には結婚したい人が居て、私のことは本気でペットぐらいにしか思っていなかった。それが真実。

 
 悲しさは虚しさに変わり、ひんやりとした空気が肌を撫でる。人肌が恋しい。元恋人でも元ペットでも幼なじみでもない。所詮、私は浮気相手に過ぎなかったんだ。


 「うん。ありがとう」


 この笑顔を見ることも。私の名前を呼ぶことも。頭を撫でてくれることも、もう全て無くなる。


 「ねぇ、悠真……」


 人ってもっと感情をコントロール出来るものだと思ってた。結局、生きている生物は皆一緒か……。いい面もあるなら悪い面もあって。いいこともすれば悪いことだってする。

 弱さに勝てるときもあれば。


 「……最後に抱いて」


 負けるときだってある。

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