光と幽霊の彼女
「ちょっとーひかる、こんなかわいい子を振ったの?」
そう言って母さんが凛子を引き連れて来る。どうやら振ったのに諦め切れなかったらしい。
「ちょっとなんできてるのよ」
雅子が文句を言ってくる。俺は母さんがいるから返事できない。もちろん雅子もそんなことは知っているだろう。
だが、それでも言ってくる。当然母さんは雅子の件を全く知らないのだ。それにそんなことを俺に言われてもなあ、どうしろと言うんだ。
「ちょっとまさか光、まだ葛飾さんのことを引きずっているの?」
当たり前だろ、そんな早く切り替えられるか。というかそもそもここにいるしな。
「引きずってても何が悪いの?」
挑発的にそう返す。俺は怒っているぞ。
「光は早く次の一歩を踏み出そうよ」
「俺は踏み出せん、悪い」
「私からもお願いします。断られた理由もわかってます。けれど私はどうしても光さんのことを諦めきれないんです」
「そうか」
俺は冷たく跳ね除ける。
「それに今のままでいいんですか? いつまでも昔のことに囚われて、それでいいんですか?」
「うるさい、出て行ってくれ。お前になんの関係があるんだよ。母さんはともかくお前は関係ないじゃないか」
実際雅子がいる今の状況で別の女子と付き合うつもりはないし、雅子が隣にいる今、凛子が言っていることは的外れなのだ。それに、末広や母さんならまだしも、雅子のことを知らない人に昔のことを言われても説得力が無い。
「ちょっと光、その言い方は良くないんじゃない?」
「いいんです、急に押しかけて来た私が悪いんですし」
「光、こんなかわいい子を泣かすなんて」
もうどうしたらいいんだ、今の状況は、凛子も母さんも俺の味方ではない。雅子だけが味方なのだ。母さんも母さんだ、息子の味方も少しはしてくれよ。
「光よくやった」