光と幽霊の彼女
「母さん頼む、事実なんだ。今も雅子は俺の彼女なんだ」
「かわいそうに、そんな幻想を見て、現実に帰ってきなさい」
母さんに軽く叩かれた。言論統制だな。
「母さん、叩いたって無駄だ。俺は決心したんだ、もう雅子は捨てないって。だからこの超常現象を理解してくれ」
「光、ありがとう!」
そう言って雅子は涙を流し始めた。大げさだなあ。
「母さん頼む」
念を押す。
「……分かったわ……」
受け入れられたか? 心無しか気持ちが明るくなる。俺の勝ちだ。
「……なんて言うわけがないでしょ。別に私は光のことを否定したいわけでもないし、凛子ちゃんとも絶対に付き合って欲しいわけじゃない。けれど光、私はあなたのことを心配してるの。今も現実に戻れてないでしょ、確かに表面上は戻れてるように見える。けど未だに誰もいないのに会話してたりとかおかしいことがたくさんあるし、現実に戻れてるように思えないの。お願い光、私を安心させて」
そう言って母親は俺に泣いてすがりながら、手を伸ばしてくる。
「ごめん母さん」
そう言って母さんの手を冷たく跳ね除ける。もうダメだ、この人は
「俺は幻覚とか幻影とか言われても、俺の中では雅子は存在してるんだよ。自分勝手とか言われても仕方ないかもしれないし、現実に戻れてないって言われても仕方ないかもしれないけど、雅子は今ここに実在してるんだよ」
言葉を整理できてないかもしれないが、怒りのままに言い放つ。
「でも心配よ」
「どうせ同じこと言うんだろ、実際母さんは俺に対して向き合ってないだろ」
「向き合ってるわよ、向き合ってないのは光、あなたの方でしょ」
どこがだよ。無理矢理くっ付けようとして!
「母さんは雅子の存在を肯定しようともしてないじゃん、はなから否定してるじゃん。それに俺の気持ちを考えずに凛子とくっ付けようとして。それを向き合ってないって言ってるだろ」
「光、雅子さんはもう亡くなったの、現実を見て」
「もういいよ、母さん」
そう言って二階の部屋に閉じこもった。もう母さんは当てになどしない。