光と幽霊の彼女
「じゃあ私の話に付き合ってよ。この前駅であった殺傷事件、あれ犯人まだ捕まってないんだよね、光気をつけないとダメだよ。光も幽霊になる保証ないんだから、ってねえ、光聞いてる?」
「聞いてない」とノートに書く。
「なんでよ、聞いてよ。まじで、もう一人死んだらどうする? 重大事件だよ。最近この手の事件多いし、警察手を焼いてるみたいだし、もうどうしようもないよね」
「なんか、雅子楽しそうだな。不謹慎だぞ」とノートに書く。
「不謹慎だっていいじゃない、私、楽しいよ。こんな事件たまにしかないしさ」
「お前変わらないよな。俺お前のこと好きやけど、ここだけは受け付けないわ。事件の被害者に申し訳ないとか思わないの?」とノートに書く。
雅子のこの性格は死ぬ前からずっとなのだ。三つ子の魂百までとはよく言ったものだ。だが、最近の治安の悪化で悪いニュースが増えたからか、心無しかヒートアップしてる気がする。俺はいつも被害者目線で見るが、雅子は事件の重大さにしか目を向けないのだ。
「思わない、全然思わない」
「お前ひどいな」とノートに書く。
「そんなこと言わないでよ、謝って」
そう言いながら雅子は俺の視界を遮る。
「お前マジでやめろ」
俺はノートにそう書く。これでは授業のノートをとれない。
「嫌でーす」